【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:天理大学対京都産業大学

いざ大学選手権へ!関西大学ラグビーAリーグ最終節、全勝対決を徹底分析
2025年11月30日(日)、関西大学ラグビーAリーグの最終節は、ともに無敗で迎えた京都産業大学と天理大学の全勝対決となりました。勝った方がリーグ優勝という、まさに大一番。緊迫した戦いの末、王座を掴んだのは天理大学でした。
最終スコア47-15。天理大が強靭なフィジカルと卓越したエリアマネジメントで勝利を収めたこの熱戦を、徹底的に分析します。
◆試合展開:前半は天理大の決定力が光る、後半は京産大が意地を見せるも及ばず
前半:天理大の「一発で取り切る」破壊力
先手を取ったのは天理大。10番を軸としたワイドな攻撃シェイプに対し、前がかりになった京産大ディフェンスのギャップを突き、SH朝倉達弥選手が走って先制トライを奪います。対する京産大も、9シェイプからショートサイドを攻め、天理大のディフェンスミスを誘発しました。10シェイプから巧みに防御ラインをずらし、FWのラインブレイクからNO8シオネ・ポルテレ選手に繋いでトライを返します。
前半の入りは、互いに敵陣22mラインに侵入すれば、「一発でトライを取り切る」決定力の高い展開となりました。天理大はペナルティーからのラインアウトモールで追加点を挙げ、さらに1-3-3-1ポッドを軸にエッジの選手が柔軟に入れ替わるスタイルでアタックを継続。主に10シェイプでFWがキャリーし、強烈なドライブと要所でのスイベルパスを使い外までボールを運んでいました。
京産大ディフェンスは押し込まれながらも、ブレイクダウンへの絡みと、外側でのナブラギ・エロニ選手の粘り強いディフェンスでターンオーバーを奪う場面もありました。しかし、天理大の敵陣22m内での決定力とFWの強さが目立ち、前半は21-8で天理大リードで折り返します。
後半:天理大の支配的な展開
後半開始直後、天理大は相手のキックミスからエリアを取り、得意のラインアウトモールで押し込んですぐにリードを広げます。
京産大は、ポルテレ選手やLOの石橋チューカ選手といったキーマンをショートサイドに配置して崩しにかかるも、天理大の外側のディフェンスの素早い上がりに阻まれ、なかなか崩しきれません。ラインアウトの獲得にはノージャンプを取り入れるなど修正を見せますが、ゴール前での天理大の強固なディフェンスにトライを阻まれ続けます。
天理大は、大学屈指のSOである上ノ坊駿介選手のパスとキックを軸としたエリアマネジメントが冴え、50-22キックやキックパスを成功させるなど、キックで前進を続けます。鋭いタックル精度と素早いディフェンスセットアップで支配的な展開を続け、京産大のミスを誘発しました。アタックではシンプルな9シェイプでもトライを取り切る強さを見せつけました。
京産大は、後半の中でも終盤、バックドアを経由して外側へボールを供給する形に修正し、エッジからエッジへとボールを運ぶ見事なトライへ繋げました。修正力の高さを見せましたが、前半の失点とラインアウト獲得の苦戦が響き、リードを覆すには至りませんでした。
◆京都産業大学
【今シーズンの京都産業:伝統のFWと充実のバックス】
京産大は今シーズンもここまで全勝で、リーグ最終戦に臨みました。チームの根幹を成すのは、伝統のラインアウトモールとスクラムを軸とした強固なFW陣です。平均体重100kgを超える重量級のパックは、セットプレーでの優位性を確保し、試合の流れを掴む最大の武器です。
ディフェンスにおいては、ブレイクダウンの接点で激しくボールへと絡み、ターンオーバーやペナルティーを誘発し、ディフェンスからアタックへの流れに乗るスタイルを徹底しています。さらに、バックスには、春から好調のCTB奈須貴大選手や、しなやかなランニング能力に長けるWTBナブラギエロニ選手といったフィニッシャーが揃い、攻撃の選択肢は多岐にわたります。試合前のコメントからも、この一戦にかける並々ならぬ想いが強く伝わってきました。
京産大のアタック:ショートサイドへのこだわりと後半の修正力
京産大のアタックは、「ショートサイドを意図的に攻める」という狙いが明確でした。広いサイドへの仕掛けよりも、狭いサイドでの数的・質的優位を狙い、天理大ディフェンスのノミネートミスを誘おうと試みました。特にポルテレ選手や石橋選手といった強力なランナーをショートサイドに配置し、起点を作る意識が高かったです。
後半、天理大の前に出るディフェンスに苦戦する中で見せた、バックドアへ直接経由し、外側へボールを運ぶスタイルは、高い修正力と判断力を示しました。必要以上にパスを増やさず、FWは縦のダミーランに留め、その裏のバックドアへ供給する形は、相手をうまく攻略できていたと言えます。このエッジからエッジへの展開からトライを獲得したシーンは、今後の大学選手権に向けた大きな収穫と言えます。
一方で、ラインアウト獲得に苦戦した点は大きな課題となりました。具体的な数値としては59%(10/17)と、天理大学にスティールされる場面も含めて不安定な攻撃起点となっていました。特にゴール前でのラインアウトの不安定さが、決定機を逃す要因となりました。また、天理大の前に出るディフェンスに対して、ハンドリングエラーやパスコースの不足からミスをする場面も見受けられました。
京産大のディフェンス:ブレイクダウンへの圧力とコリジョンの課題
京産大のディフェンスは、個々の選手がテイクダウンを取るタックル精度は悪くありませんでした。押し込まれながらも、ブレイクダウンには絡み続ける圧力をかけ、外側ではエロニ選手のディフェンスでターンオーバーを奪うなど、粘りを見せました。
しかし、天理大の強力なFWキャリーとブレイクダウンの強さに対し、ドミネートされる場面が続き、ディフェンスラインが後手に回ってしまう展開が目立ちました。特にコリジョンの部分で差し込まれるフェーズが多く、ゲインを許しがちになり、苦杯をなめる原因となりました。自陣側ではポゼッションではなく、テリトリー優先でロングキック中心の選択をし、ラインアウトのクイックスタートを多用するなど、工夫も見せていました。
◆天理大学
【今シーズンの天理大学:圧倒的なディフェンスとSO上ノ坊の統率力】
今シーズンの天理大は、その圧倒的なディフェンス力が特筆すべきポイントです。関西リーグでここまで失点はわずか「55」、1試合あたり「11」失点という数字は全国トップクラスの堅守を物語っています。特に自陣22mに入られてからのモールディフェンスとFWによる近場のディフェンスは鉄壁で、1人1人のコンタクト強度がもう一段階ギアが上がる印象を受けます。
その一方で、得点力も合計315得点と関西リーグで圧倒的なスコア力を誇り、攻守ともに盤石の状況が伺えます。これを支えるのは、キャプテンであるSO上ノ坊選手です。ランニング、キック、パスの全てを高いレベルで使いこなし、試合展開や時間帯によって自分の色の出し方を巧みに操る統率力でチームを牽引しています。加えて、FW陣の重量と機動力が今年も健在であり、穴のないチームを作り上げています。
天理大のアタック:圧倒的な継続率とエリアマネジメント
天理大のアタックは、「圧倒的なブレイクダウンの強さ」と「高い継続率」が今年の最大の武器であることを証明しました。10シェイプを中心にFWがタックルを食いながらもドライブし、1人でもボールプロテクトできるブレイクダウンの強さによって、ターンオーバーされないポゼッション力を誇りました。
1-3-3-1の配置を軸にエッジの選手が柔軟に変わるスタイルで広範囲を使い、アタックリサイクルも精度とスピードが早く、外側に次々とチャンスを創出しました。特にゴール前では、11人モールを披露するなど、FWの強さを最大限に生かした決定力は驚異的です。
また、この日のSO上ノ坊選手はランニングよりもパスとキックを軸にゲームメイクしており、効果的なエリアマネジメントでチームを前進させています。合わせて、50-22キックやキックパスといった高い足技のスキルで魅了しました。エッジのFLアリスター・サウララ選手の効果的なオフロードパスも、アタック優勢に大きく貢献しました。
加えて、敵陣22mに入ってからのアタックでは、ほとんどアタックオプションを封印し、戦術的な駆け引きは見られませんでした。あくまで個人的にですが、大学選手権へ見据えての布石ですらあるように感じました。
天理大のディフェンス:ダブルタックル意識と支配的なプレッシャー
天理大のディフェンスは、非常に支配的でした。ダブルタックルの意識が高く、鋭く前に出ることで、京産大のモメンタムを寸断しました。特にミドルゾーンのプレッシャーに比重を置き、外側をある程度捨てることで、京産大にモメンタムを作らせない狙いが明確でした。
一人一人のタックル精度とディフェンスのセットアップが早く、ほとんど後手に回ることがありませんでした。詰め切るディフェンスが有効に機能することで京産大のハンドリングエラーやミスを誘発。さらには、ハイパントからのラッシュとターンオーバーを引き起こすなど、守備から攻撃への切り替えも機能していました。
ラインアウトディフェンスからもプレッシャーをかける狙いを持っており、自陣22m内ではハイパントではなく、ロングキックによるタッチキックを選択するなど、状況に応じた賢い判断も見られました。
◆まとめ:天理大が示した王者の貫禄、京産大は修正力に期待
全勝対決を制し、関西リーグ王座に輝いた天理大学は、アタックにおける圧倒的なブレイクダウンと継続率、SO上ノ坊選手を中心とした巧みなエリアマネジメント、そして決定力の高いバックスリー陣という、盤石の強さを見せつけました。後半終盤まで持続した鋭いディフェンスを武器に、大学選手権へ突き進みます。
敗れた京都産業大学は、ラインアウト獲得の不安定さと、ディフェンスにおけるコリジョンで差し込まれるフェーズの多さが響きました。しかし、ラインアウトモールでの強さや、後半に見せたエッジからエッジの攻撃を含むアタックマネジメントの修正力は、今後の全国での戦いに大きな期待を抱かせます。
両チームともに、この激戦を経て、関西の代表として「日本一」という目標に向かい、大学選手権へ挑みます。
では。
2000年生まれ、神戸市出身。高校からラグビーを始め、大学まで選手としてプレー。学生時代にはリーグワンチームのインターンアナリストとして現場を経験。現在は大学・高校チーム向けに試合分析や講習会、コーチングを行う「RugbyAnalyzer」を立ち上げる。ラグビーの発展と学生育成への情熱を絶やさない。