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【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

全勝の京産大が試練を突破! 関学のアタックの決定力と粘り!

いよいよ大学ラグビーシーズンは佳境を迎え、各リーグで熱戦が繰り広げられています。今回は、関西大学Aリーグにおける注目の一戦、全勝を維持する京都産業大学と、4勝1敗で3位に付ける関西学院大学の対戦をレポートします。

肌寒さが増す中、会場は熱気に包まれ、両チームのプライドがぶつかり合いました。試合の焦点は、やはり京産大の強力なフォワード(FW)陣に、関学大FWがどこまで対抗できるか。そして、関学大の誇る展開力と決定力のあるバックス(BK)陣が、京産大の堅守を破り切れるかに集まりました。

試合展開:京都産業、リードを許すもセットプレーで逆転

序盤は京産大がポゼッションとテリトリーを握る展開となりましたが、両チームともにミスやペナルティーが重なり、試合は断続的になりました。ペナルティーの数は両チーム合わせて「33」と規律面での課題はみられました。
前半、京産大はBKで1本、得意のモールで1本のトライを奪いましたが、対する関学大もモールで2本のトライを奪い返し、12-12の同点で折り返す、手に汗握る展開となりました。

後半に入ると、関学大が相手のミスから機を掴み、スコアを奪って一時リードします。しかし、京産大はここから真骨頂を発揮しました。10番吉本 大悟選手と9番髙木 城治選手の正確なキックを駆使してエリアを回復し、強力なスクラムからのペナルティー獲得、そしてモールでのトライで得点を重ね、逆転に成功しました。終盤まで関学大は粘りを見せましたが、京産大がリードを守り抜き、28-22で勝利を収め、全勝を堅持しました。


京都産業大学のアタック:9シェイプを軸とした多角的なアプローチ

京産大のアタックスタイルは、FWを効率よく配置する「3-3-1-1」「3-3-2」のポッドを基調としていました。特筆すべきは、逆目(ブラインドサイド)への10番選手のランを起点に、ディフェンスのエッジ(外側)を崩そうとする明確な狙いが見られた点です。

  • エッジへの工夫: 普段13番を担うことの多いナブラギ・エロニ選手をウイングに配置するなど、決定力を高める工夫が見られました。また、「3-3-1-1」のポッド配置を用い、エッジに6番石橋チューカ選手5番石川 東樹選手といった強力なFWを配置し、攻略を試みました。
  • シングルラインのブレイク: 最近主流のダブルラインではなく、FW-BK-FWのシングルラインでパスを繋ぎ、走り切れるバックローの能力を活かしたアタックが、最初のトライに繋がりました。
  • ミドルゾーンの苦戦: しかし、1本目のトライ以降はエッジの攻略に苦戦しました。これは、ミドルゾーンにおけるFWのキャリーが前にあまり出られず、有効な状態でエッジに運べなかったことで、関学大の対応を許し、外側へのパスが浮くなどのミスからターンオーバーを招く場面が散見されました。
  • セットプレーの決定力: スコアの多くは、苦戦したラインアウトに代わり、スクラムからのペナルティー獲得(PG)と、モールが占めました。敵陣深くへ侵入さえすれば、そのセットプレーの威力は圧倒的であり、勝利の大きな要因となりました。

後半からの戦術転換として、キックの多用が成功しました。特にハイパントと、ディフェンスラインの背後を狙うチップキックやグラバーキックが効果的でした。キッカーである10番吉本選手の精度はもとより、バックスラインの洗練されたキックチェイスが功を奏し、狙いを持ってエリアを支配しました。自陣からハイパントを使い、ボールの再獲得に成功していたことは大きな影響力を持っていました。また、前半から後半にかけて軸を変えながら試合を進められる力は今年の大きな強みだと言えます。


京都産業大学のディフェンス:速いラインスピードと重いブレイクダウン

京産大のディフェンスは、全ての接点において圧力をかけることを重視し、ラインスピードの速さが光りました。

  • 個々のタックル精度: 個々のタックル精度が高く、タックル後のラックファイトでも押し返す意識が非常に強かったと言えます。
  • ミドルゾーンの封鎖: 外側へのボール展開を許すシーンが少なく、12番那須選手の的確なボールタックルなどでピンチを未然に防ぎ、ミドルゾーンを効果的に閉ざすことができました。

ただ、課題点としてペナルティーの多さが目立ちました。タックルの高さやオフサイドなど、規律の面で反則が重なり、自ら勢いを止めてしまう時間帯があり、苦戦の要因となりました。


関西学院大学のアタック:10シェイプとモールの決定力

関学大のアタックスタイルは「1-3-3-1」を基本としながら、1年生SO新井 竜之介選手を起点とした「10シェイプ」を中心に組み立てられました。

  • 展開ラグビー: ポッドで細かく当てにいくより、深めのパスを介してバックドアを使ってエッジまでボールを動かすスタイルで、ボールを早く散らすことで前進を図りました。
  • ターンオーバー後の縦への意識: ボールポゼッションする時間は京産大に比べて少なかったものの、ターンオーバー後は横だけでなく縦へのキックを効果的に使用し、エリアとチャンスメイクを狙いました。
  • モールの脅威: この試合で最大の武器となったのがモールです。ゴール前では「オール面」「6面」など様々な形でボールを獲得し、強力な京産大FW相手にも押し込み、2本のトライに繋げました。アタック継続が難しい状況でも、ディフェンスでのペナルティー獲得から敵陣に入り、モールでトライを取り切る展開は、関学大の大きな収穫となりました。

関西学院大学のディフェンス:ミドルゾーンでの健闘とエッジの課題

関学大のディフェンスは、ミドルゾーンにおいて京産大のポッドアタックに対して十分に渡り合っていました。

  • ミッドフィールドの圧力: 京産大のポッドが狙いを絞りやすかったこともあり、個々のタックラーが前に出てしっかりと仕留めていました。特に4番池辺 康太郎選手5番梁瀬 将斗選手はミッドフィールドにタイトに立ち続け、3番大塚 壮二郎選手もハードなタックルを連発し、京産大の勢いを寸断しました。
  • エッジの課題: 一方で、エッジ(外側)のディフェンスには課題が残りました。ラックチェイスやボールウォッチのミスから間合いをずらされ、ブレイクや有効なゲインを許すシーンが見られました。頭越しのブリッジパスに対してはスライドで対応できていましたが、鋭いカットパスや、シングルラインで押し込んでくるアタックに対しては後手に回り、ミドルゾーンでのノミネートミスからギャップを生み出し、トライを献上する結果となりました。

データで見る分岐点:決定率とキック戦略

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試合結果を左右したデータを分析すると、興味深い傾向が見て取れます。

両チーム合計でペナルティーが33と多かったこともあり、ラインアウト機会が多発しましたが、京産大が22回で72%、関学大が16回で69%と、両チームとも獲得率が上がり切りませんでした。この「攻撃権の移り変わりやすさ」が試合をぶつ切りにした象徴と言えます。

次に22mライン侵入回数を見ると、京産大が13回に対し、関学大は5回と大きな差が出ました。しかし、トライ数は互いに3本であり、トライ効率(22m決定率)は関学大が京産大を大きく上回る結果となりました。京産大はPGを選択する場面もあったため一概には言えませんが、アタックの決定率の低さが浮き彫りになりました。

アタックシェイプの対比として、京産大の9シェイプ主体の近場と安定した攻撃に対し、関学大は10シェイプとバックスボールを軸とした外側へのチャンスメイク、そしてターンオーバーからの素早い動きを特徴としていました。

キックタイプでは、関学大のロングキックに対して、京産大はハイパントを多用する構図が見えました。特に後半、京産大はハイパントとチップキックを駆使し、キックチェイスによるプレッシャーでディフェンスラインを押し上げ、試合を有利に進めることに成功しました。


まとめ:セットプレーとエリア戦略が勝敗を分けた激戦

総じて、ペナルティーが非常に多い試合となり、試合のテンポが失われがちな展開となりました。その中で、いかにペナルティーをスコアに繋げられたかが勝敗の大きな要因となりました。

京産大は、アタック継続に課題を残しつつも、後半のキックによるエリアマネジメントの成功と、モール・スクラムというFWの絶対的な武器で着実にスコアを重ね、逆転勝利を収めました。関学大は、少ないチャンスを活かした高いトライ効率モールの強さで全勝チームをギリギリまで追い詰めたことは大きな収穫であり、大学選手権に向けて自信となるでしょう。

京産大は次戦、同じく全勝の天理大学との大一番を迎えます。この激闘を乗り越えた経験は、必ずや次戦に活かされるはずです。両チームの今後の活躍に期待が高まります。

では。

(文:山本陽平)

YOHEI YAMAMOTO
YOHEI YAMAMOTO

2000年生まれ、神戸市出身。高校からラグビーを始め、大学まで選手としてプレー。学生時代にはリーグワンチームのインターンアナリストとして現場を経験。現在は大学・高校チーム向けに試合分析や講習会、コーチングを行う「RugbyAnalyzer」を立ち上げる。ラグビーの発展と学生育成への情熱を絶やさない。

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