【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:近畿大学対関西大学

まさに死闘!ポゼッションvsエリア、勝負を分けたセットプレーの執念
関西大学ラグビーリーグ開幕から2試合を終え、近畿大学が1勝1敗、対する関西大学が痛い2連敗という状況で迎えたこの一戦は、両チームにとって秋の戦線を左右する「落とせないゲーム」となりました。上位に食い込むためには、もはやどちらも負けられない極限のプレッシャーの中、試合は最後まで予測不能な、まさに劇的な結末を迎えました。
近年の対戦成績の因縁も相まって、試合は近畿大学の「ポゼッションアタック」と、関西大学の「テリトリーゲーム」という、極めて対照的なスタイルが激しくぶつかり合いました。ディフェンスにおいても、お互いの決定機を許さぬ堅固な攻防が続き、特に関西大学7番 三木翼選手に見られたような、試合の流れを変える「執念のスティール」も飛び出す白熱の展開となりました。
◆試合展開:サヨナラPGが導いた劇的勝利
試合は、SO﨑田士人選手のロングキックを軸にテリトリーを支配しようとする関西大学に対し、近畿大学が自陣からでもボールを継続するポゼッションアタックを見せる構図で進行しました。
まずリードを奪ったのは関西大学。敵陣でのターンオーバーという、彼らの得意な形からチャンスを作り、強固なモールを起点に先制します。対する近畿大学も、中盤でのラインブレイクを起点にペナルティーを誘い、ゴール前からの攻撃をスコアに繋げ、一進一退の攻防に。
試合のハイライトは後半。近畿大学は、工夫されたシークエンスアタックから2本連続でトライを奪い、リードを奪うことに成功します。しかし、敗戦の危機に立たされた関西大学は、ゴール前のFWが10フェーズを超える猛烈な連続攻撃を仕掛け、ディフェンスをこじ開けて土壇場で同点に追いつく執念を見せました。
そして、試合の結末を分けたのはまさしくラストワンプレー。プレッシャーがピークに達した瞬間、スクラムで執念のペナルティーを奪い、サヨナラペナルティーゴールを決めた関西大学が劇的な勝利を手繰り寄せました。
◆近畿大学:SH渡邊選手が牽引する高精度アタック
近畿大学は、現代ラグビーでは比較的珍しくなった試合序盤のキックオフレシーブの局面からポゼッションを重ねるスタイルを徹底し、ボールを持ちながら防御をこじ開ける道筋を模索していました。
巧妙に設計されたアタックシークエンス
攻撃の中心にいたのは、SH渡邊晴斗選手です。彼を起点とした9シェイプがアタックの基本構造となり、スイベルパスを用いてバックドアへボールを動かし、外側へ展開する動きが近大のアタックの代名詞となりました。加えて、大外のスペースやキックカウンターの局面では、WTB太田啓嵩選手のダイナミックなランニングからブレイクを起こし、決定的なスコアチャンスへ繋げていました。
特筆すべきは、FW陣の高いハンドリングスキルに裏打ちされたティップオンパスの多用です。FW同士の短いパスは、シェイプに帰属する全員がボールキャリアーとなり、相手ディフェンスの焦点を絞らせませんでした。バックスラインは広く浅いラインを形成し、FWとバックスの役割を明確に分離しながら、内側で良い形でボールが供給された際、走力のあるバックスがブレイクを起こし、決定的なスコアチャンスを生み出していました。
その戦術的深さを見せたのが、後半の連続スコアです。
- 一つ目のトライは、SH渡邊選手がラックから意図的に離れた位置に立ち、ピックを仕掛けるFWをダミーとし、深めに位置するバックスラインへボールを供給していました。ラックサイドに集中していた関大ディフェンスの裏をかく効果覿面なプレーでした。
- 二つ目のトライは、ラックサイドのFWへのダミーパスを入れ、外側から13番 井上 晴嵐選手が縦に鋭く走り込み、その裏を9シェイプの機動力のあるFWが回り込みギャップを突く形。二列目から飛び出してきたバックスの縦方向のランニングに対し、FWが差し込むこの連動は、関西大学にとって非常に嫌なプレーとなりました。
これらは、事前に入念に用意されたプレーであり、ハーフ団の采配が見事に的中し、相手の陣形に合わせて練り込まれたプレーを繰り出す、アタックの質の高さを示しています。
課題となったアタックレンジとトランジション
しかし、ポゼッションを追求するがゆえの課題も見られました。バックスラインがシングルに並ぶ構造は、相手のスライドディフェンスに上手く対応されてしまうと、苦しい体勢でのラックメイクを強いられる原因となりました。また、ミドルゾーンにおけるアタックレンジの狭さも、相手ディフェンスに見切られやすい要因となり、ティップオンパスがブレイクに繋がらないシーンを増やしていました。
何よりも、ポゼッションラグビーの宿命として、ターンオーバーされた後の1次ディフェンスの対応が大きなテーマとして残りました。ボールを拾われたり、ペナルティーを犯したりした後に一気にピンチを背負い、スコアに直結させられた場面は、この試合を苦しくした大きな要因でした。
ディフェンス面では、タックル強度の高さは今年も健在で、差し込まれる場面よりもドミネイトする場面の方が多く見られましたが、ゴールを背負った際の近場の連続ピックやモールに対する課題は、今後の修正点となるでしょう。
◆関西大学:SO﨑田選手と強靭なFWによる勝利
関西大学は、終始アタックとディフェンスの戦術的なバランスを保ちながら、スコアチャンスを確実にものにしていく効率的かつフィジカルなラグビーを展開しました。
圧倒的なエリア支配力とキックチェイス
関西大学の戦い方は、SH 宮内 幹大選手を起点としながら、中盤からは徹底したキック中心のテリトリーメインの戦略にシフトしました。その戦略を支えたのが、SO 﨑田 士人選手の推定60mにも達する超ロングキックです。この一発のキックが、試合の局面を一瞬で敵陣深くに押し込み、エリア獲得に大きく貢献しました。
このエリア獲得の意識は、キックチェイスのディフェンス精度として具現化されました。高精度のチェイスから相手にプレッシャーをかけ、ターンオーバーを誘発するシーンは、今季の関西大学の最も強力な武器であると断言できます。スコアの多く(合計4本のトライ)が敵陣でのターンオーバーを起点としている事実は、この戦術の有効性を証明しています。
勝利を決定づけたFWの執念と三木選手の献身
関西大学のもう一つの得点源は、FW戦における圧倒的な強さです。中盤でペナルティーを獲得し、敵陣でのラインアウトモールを起点に押し込む流れは、安定した攻撃パターンとなっていました。
そして、この試合の最も重要な決め手となったのがスクラムです。前半には反則を取られるシーンがありましたが、後半の重要な局面、そして同点に追いついた後の最後の土壇場でペナルティーを獲得したことが、FW陣のフィジカルと精神的な勝負強さが勝利を手繰り寄せたことの要因と言えます。80分間フィールドプレーを続けた後、最後に力を振り絞りペナルティーを取り切った関西大学のFW陣は、まさしく「殊勲の働き」でした。
ディフェンス面では、規律を保ちながら近畿大学のポゼッションに対し粘り強く対応しています。特に7番三木翼選手は、ディフェンスラインの中でも鋭いタックルを連発し、さらにスティール(ターンオーバー)を二度成功させるなど、近畿大学の連続攻撃の芽を摘む、極めて献身的な役割を担っていました。
◆データが語る勝敗の分岐点
この試合の勝敗を分けたポイントは、詳細なデータからも明らかになりました。


両チームのアタックシェイプは9シェイプが中心でしたが、決定的な差が生まれたのはセットプレーとエリアの攻防でした。
ラインアウトの獲得率は、近畿大学60%に対し、関西大学は76%と差がつきました。関西大学は13回のラインアウト機会から安定した獲得率を見せ、そこから攻撃を生み出しました。一方、近畿大学にとって、マイボールのラインアウトやスクラムで逆にペナルティーを奪われるシーンは、攻撃を寸断され、苦しめられた最大の要因と言えるでしょう。
22mエントリー回数は関西大学が近畿大学を上回りました。これは、関西大学が攻撃回数自体は同等か少ない中で記録した数字であり、ロングキックとキックチェイスによる敵陣でのターンオーバー戦略が、効率的なエリア侵入に繋がったことを示しています。近畿大学は侵入回数あたりにおいては的確にスコアまで繋げられていたものの、そもそも敵陣に入りきれない時間が長かったことが、最終的な敗因の一つとなりました。
◆まとめと今後の展望
スコアが拮抗する展開で、両チームともにディフェンスとアタックの持ち味が出尽くした、非常に質の高いゲームでした。
ポゼッションを徹底し、ハーフ団の采配と工夫されたシークエンスでリードを奪った近畿大学。そのアタックの可能性は間違いなく本物ですが、セットプレーとトランジションディフェンスの修正が、今後の上位進出の鍵となります。
対照的に、戦うエリアを意識し、セットプレーとFWのフィジカルで最後の最後まで粘り強く戦い抜いた関西大学。逆転されてもジリジリと迫り、最後に値千金のスクラムでの踏ん張りを見せた勝負強さは、2敗からの巻き返しに向け、大きな自信となるでしょう。
両チーム共にこの死闘を糧に、どのように残りのリーグ戦を戦い抜くのか、今後の展開から目が離せません。では。
(文:山本陽平)
2000年生まれ、神戸市出身。高校からラグビーを始め、大学まで選手としてプレー。学生時代にはリーグワンチームのインターンアナリストとして現場を経験。現在は大学・高校チーム向けに試合分析や講習会、コーチングを行う「RugbyAnalyzer」を立ち上げる。ラグビーの発展と学生育成への情熱を絶やさない。